論文がEarly viewになりました

すっかりと秋の気配を越えて、冬っぽくなってきましたね。寒いです。。。

さて、久しぶりに論文が出ました。広大の土居さんと一緒に書いたのですが、SADやRADに興味のある方は一読して頂ければ嬉しいです。原著ではなく、とても短いので、すぐに読めると思います。OikosのBlogにも、写真入りで紹介してもらってますので、こちらを眺めてもらっても良いかと思います。

Oikos Blog

Doi & Mori (in press) The discovery of species-abundance distribution in an ecological Oikos

内容は、rank abundance distribution(RAD)・species abundance distribution(SAD)研究の先陣を切った元村博士と、これまでRAD・SAD歴史の表舞台に登場しなかった沼田博士に関してです。と言うわけで、original articleではありません。

元村博士によって、「RADがgeometric seriesに従う」ということが示されたのは「motomura's geometric series」と表記されるほど世界的に有名ですし、あのFisherやPrestonよりも先にパターンを発見したというのはスゴイことだと思います(しかも、元村博士は生態学者ではないというのも驚き)。

しかし、世界的に誤解されていることがあります。

それは、geometric seriesに対して生物学的な根拠をもとに、説明を加えたのは、元村博士ではなく、沼田博士だということです(元村博士も説明を試みてはいます)。

元村博士は、観察されたRADのパターンに、geometric seriesを当てはめたわけですが、なぜ?についてまでは、その論文では言及していませんでした。これは元村博士に限らず、FisherやPrestonも同様です。

それに対して、あのMacArthurは生物学的な根拠をもとに説明するべきだと、ニッチに基づいた説明を試みたのです(うまいこと説明できてはいないが…)。しかーし、実はMacArthurが説明を試みるよりも先に、沼田博士がgeometric seriesに対する生物学的な根拠(なぜ、geometric seriesになるか?)を考えていたのです。

ただ、色々な研究者による引用の仕方の"あや"が、geometric seriesに対する生物学的な説明も元村博士によって考えられたんだと言う誤解を招いてしまいました。

元村博士の論文も沼田博士の論文も、日本語で書かれているため、西洋の研究者が正確に理解することは難しく、誤解されたまま今日に至ったことは仕方がないと思います。と言うわけで、今回、元村博士の論文の英訳とともに、沼田博士の功績などについても整理した論文を書かせていただきました。

僕自身も知らなかったことが多かったのですが、D論でRADを扱って以降、ずっと歴史を振り返っている最中にモヤモヤしていたことが今回の論文でスッキリとした感があります。今回、50年以上も前の論文を数多く読みましたが、あらためて、先人たちの凄さを感じました。いやはや。